スライドPowerPoint・PDF を公開
授業でそのまま使えるスライドを公開:銀行もゲームも止まった10月21日(小学校・中学校・高校)
先生向け。
2026年10月21日の夜11時、プログラミング言語 PHP の重大な脆弱性を直す修正版が公開されました。予定より 1 日早い公開で、その前から銀行やネットショップ、ゲーム、保育の連絡アプリなどがサービスを一時止めました。
この出来事を 1 時間の授業で扱うためのスライドを、小学校高学年・中学校・高校の 3 種類で作りました。どれも話す人の台本(スライドのノート)、A4 1 枚のワークシート、指導の流れ(時間配分・問い・よく出る質問)がそろっています。学習指導要領のどこに当たるかも、学年ごとに書いています。
小学校高学年(5・6年)
インターネットのお店が、次々に閉まった日
改変・商用も自由
- ねらい
- 銀行やネットショップが、利用者を守るためにサービスを一時止めたことを、自分の言葉で説明する。アップデートの知らせは押す前に大人に見せる、など自分にできることを一つ選ぶ
- 学習指導要領
- 総則の情報活用能力(情報モラル)。道徳・社会(第5学年)と関連
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落とす
指導の流れを読む中学校
PHP の修正が公開された夜、社会はどう動いたか
改変・商用も自由
- ねらい
- 「脆弱性 → 修正の公開 → 予防のための一時停止と更新」のつながりで出来事を説明し、社会のサイバーセキュリティが連携で守られていることに気付く
- 学習指導要領
- 技術・家庭(技術分野)D(1)ア・D(4)イ。道徳・学級活動と関連
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指導の流れを読む高等学校(情報Ⅰ)
修正版の公開まで、あと1時間
改変・商用も自由
- ねらい
- 脆弱性・修正の公開・攻撃の関係を、時系列と一次情報で説明し、サービスを止めるかどうかの判断を考察する
- 学習指導要領
- 情報Ⅰ (1)ア(イ)・イ(イ)、(4)ア(ア)・イ(ア)
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指導の流れを読む使ってよい決まり
この作品は クリエイティブ・コモンズ 表示 4.0 国際 ライセンスで提供されています。
出典を書けば、直して使っても、配っても、お金を取る講座で使ってもかまいません。表示のしかたの例:「出典:Data is CITY(teleport.jp/dataiscity/)、CC BY 4.0」。スライドの最後の 1 枚に、この出典が入っています。
スライドの画と図は、自分たちで作ったものです。報道の画面や他社のページの画は使っていません。
授業の前日に確かめること
スライドの事実は 2026年10月27日時点のものです。授業の前日に、IPA「PHPの脆弱性対策について」が更新されていないか(国内の被害の書きぶり)を確かめてください。学年ごとの確かめることは、指導の流れの「授業の前日に確かめること」にあります。
作り方
調べものとスライドづくりには AI を使いました。小学校・中学校・高校の先生の立場で読むレビューを 2 回通して直し、事実は一次情報(PHP の公式の発表、IPA、報道ほか)で確かめています。使った事実と出典は、スライドの隅と、指導の流れの終わりの表にあります。
指導の流れ
小学校高学年(5・6年)指導の流れ:インターネットのお店が、次々に閉まった日
スライド:php-20261021-elementary.pptx(12 枚、ノートに台本)/php-20261021-elementary.pdf ワークシート:worksheet-elementary.pdf(A4、1 枚。直すときは worksheet-elementary.pptx) 出典:Data is CITY(teleport.jp/dataiscity/)、CC BY 4.0
ねらい
- 2026年10月21日に、PHP の「弱いところ(ぜい弱性)」を直すために、銀行・ネットショップ・ゲームなどが、利用者を守るためにサービスを一時止めたことを、自分の言葉で説明できる。
- アップデートの知らせは、どこに出たかで決めず押す前に大人に見せる、など、自分にできることを一つ選べる。
学習指導要領との関わり(候補)
| 教科・領域 | 当たる所 | この授業での扱い |
|---|---|---|
| 総則 | 第1章 第2の2(1) 情報活用能力(情報モラルを含む)を教科等横断的に育成 | 1時間の中で、情報モラル(安全への知恵・情報セキュリティ)を扱う |
| 特別の教科 道徳(関連) | 第3の2(6)「情報モラルに関する指導を充実すること」。内容 A[節度、節制]〔第5・6学年〕「安全に気を付けることや、生活習慣の大切さについて理解し…」 | スライド9「お店を閉めたのは、悪いこと?」で、困る人と守る人の両方から考える。道徳の時間として行うなら、内容項目に沿って主題を立て直す |
| 社会(第5学年、関連) | 内容(4) ア(イ)「大量の情報や情報通信技術の活用は、様々な産業を発展させ、国民生活を向上させていることを理解すること」 | 銀行・ネットショップ・保育の連絡が情報通信技術に支えられていることの裏側として |
| 総則(プログラミング、関連) | 第1章 第3の1(3)イ | 「コンピューターは人が書いた命令で動く」(スライド5、時間があれば) |
情報モラル指導モデルカリキュラム(「教育の情報化に関する手引」追補版 第2章第4節)の「安全への知恵」「情報セキュリティ」に当たる。小学校の段階の目標は「情報社会の危険から身を守るとともに、不適切な情報に対処できる」。
時間配分
主な問いは 3 つ(スライド2・6・9)。ほかの問いかけは「時間があれば」として台本に残してある。
45 分
| 時間 | スライド | 活動 | 問い |
|---|---|---|---|
| 0〜5分 | 1〜2 | 導入:メンテナンス中の画面 | 主な問い①「どう思う? どうして止まったのかな?」 |
| 5〜14分 | 3〜5 | その日に起きたこと(昼すぎ〜夜8時/21時55分/23時)、止まったもの、PHP(使う言葉が分かるサイトの約7割) | ― |
| 14〜24分 | 6〜7 | かぎのたとえ。悪い人より先に取りかえたい。今回は配る前に話がもれ、1日早めた | 主な問い②「自分の家のかぎがそうだったら、どうする?」 |
| 24〜26分 | 8 | 総理大臣の呼びかけ(短く読む) | ― |
| 26〜33分 | 9 | お店を閉めたのは、悪いこと? 今のところ日本で被害の知らせはない(IPA) | 主な問い③(挙手→理由) |
| 33〜41分 | 10〜11 | アップデートの知らせは、どこに出たかで決めず、押す前に大人に見せる。自分にできる3つ | ― |
| 41〜45分 | 12 | ワークシート①② を書く。③ は宿題でよい | ― |
計 45 分(1+4+3+3+3+6+4+2+7+4+4+4)。余りがないので、配布や質問で押したら、5 を1分に縮め、8 を飛ばす(台本にも書いた)。
15 分の短縮版(朝の会・学級活動の一部)
| 分 | スライド |
|---|---|
| 1 | 1 |
| 2 | 3 |
| 3 | 6(主な問い②は口頭で一人だけ) |
| 2 | 7 |
| 3 | 9(主な問い③は挙手だけ) |
| 2 | 10 |
| 2 | 12(② だけ口頭で) |
計 15 分。
授業の前日に確かめること
- IPA「PHPの脆弱性対策について」が更新されていないか(国内被害の書きぶり)。
- 学校のタブレットの更新を、教育委員会・学校がどう管理しているか(スライド10「学校のタブレットは先生に」の言い方を合わせる)。
- 自校で使っている連絡アプリが止まったかどうか(スライド4で聞かれる)。
- スライド8で総理大臣の名前と投稿を映すので、管理職に一言伝えておく。よい・悪いは言わずに読む。
- 家がネットでお店をしている子への気配り(スライド9)。
よく出る質問と答え(台本にもある)
- 「直したプログラムは夜11時なのに、なぜその前に止めたの?」→ 古いかぎのままだと、開けられてしまうかもしれないから。だから、新しいかぎが届くまで、お店を閉めておいた。
- 「お母さんの銀行のお金は大丈夫?」→ 止めたのはインターネットで手続きをするサービス。守るために止めた。今のところ、日本で被害の知らせはない(IPA)。
- 「もう話がもれていたなら、間に合わなかったの?」→ もれた話を見た悪い人もいたかもしれない。だから1日早く配って、なおさら急いで取りかえた。今のところ、日本で被害の知らせはない。
- 「インターネットの7割が止まったの?」→ 7割は「PHP を使っている」割合(使っている言葉が分かるサイトのうち)。止まったのは、そのうちの一部。
たとえと言い方の注意
- 今回は、だれかの「かぎのかけ忘れ」ではなく、PHP というプログラムの「かぎの作り」そのものに弱いところがあった。
- 「かぎがなくても開けられる」は、実際には「ログイン(認証)なしで、外からサーバーの上で勝手にプログラムを動かされるおそれ」(PHP 公式発表)。
- ウェブサイトを見るだけの人が自分で PHP を直す必要はない。仕組みは自分のタブレットのアップデートと同じ、と伝える。
- アップデートの知らせは、設定にも、アプリのストアにも、ゲームを開いたときにも出る。本物もにせものもあり、見た目では見分けにくい。だから、どこに出たかで決めず、押す前におうちの人に見せる。学校のタブレットは触らず先生に言う(スライド11の1・2も同じ話)。
- 話の筋(7枚目):弱いところが見つかった → 直すかぎを用意 → 配る前に話がもれた → 1日早く配った → お店は古いかぎのままだと危ないので、予防のために閉めて取りかえた。「配る前から攻撃されていた」とは言わない。
- 安心の言葉は「今のところ、日本で被害の知らせはない(IPA)」まで。「被害はなかった」「大人が取りかえたから」とは言わない(IPA は理由まで言っていない)。
- パスワードの心がけ(スライド11の3)は、今回のこととは別の、ふだんの心がけとして話す。
ワークシート(worksheet-elementary.pdf)
- ① 10月21日に、何が起きた?(短く) ヒント:「弱いところ」「直す」「止めた」のうち二つを使う
- ② 自分にできることを一つ選ぶ(3つ+そのほか)/いつ、どうする?
- ③ 今日の話を聞いて、思ったこと(家で書いてきてもよい)
評価の目安:① にヒントの言葉が二つ入っていればよい。② は「いつ」まで書けていればよい。
使った事実と出典(スライドの隅にも記載)
中学校指導の流れ:PHP の修正が公開された夜、社会はどう動いたか
スライド:php-20261021-junior-high.pptx(15 枚、ノートに台本)/php-20261021-junior-high.pdf ワークシート:worksheet-junior-high.pdf(A4、1 枚。手がかりカードは刷らず、スライド10を映す。直すときは .pptx) 出典:Data is CITY(teleport.jp/dataiscity/)、CC BY 4.0
ねらい
- 2026年10月21日の出来事を、「脆弱性 → 修正の公開(=弱点の公開)→ 予防のための一時停止と更新」のつながりで説明できる。
- 社会のサイバーセキュリティが、研究者・開発者・国の機関・会社の担当者・利用者の連携で守られていることに気付き、自分の行動を一つ決める。
学習指導要領のどこに当たるか
技術・家庭(技術分野)の授業として行う。道徳・学級活動は「関連」にとどめる(この1時間を道徳の時数には数えない)。
| 区分 | 当たる所 | この授業での扱い |
|---|---|---|
| 技術分野 2 内容 D(1)ア | 「…情報のデジタル化や処理の自動化、システム化、情報セキュリティ等に関わる基礎的な技術の仕組み及び情報モラルの必要性について理解すること」 | サーバーとクライアント(スライド5)、脆弱性と修正(6〜8) |
| 技術分野 3 内容の取扱い (4)ア(D の取扱い) | 「…社会におけるサイバーセキュリティが重要であることについても扱うこと」 | 連携の図(スライド12) |
| 技術分野 2 内容 D(4)イ | 「技術を評価し、適切な選択と管理・運用の在り方…について考えること」 | 「止める?止めない?」の判断(10〜11)、更新の管理・運用(13〜14) |
| 総則 | 第1章 第2の2(1) 情報活用能力(情報モラルを含む) | 全体 |
| 道徳(関連) | 第3の2(6) 情報モラルに関する指導の充実。内容 C[遵法精神、公徳心]とも関わる | うわさや漏れた情報を広めない(14)。道徳の時間で扱うなら、内容項目に沿って主題を立て直す |
| 学級活動(関連) | 日常の生活の安全 | 端末の使い方の約束と結びつけるとき |
情報モラル指導モデルカリキュラム(「教育の情報化に関する手引」追補版 第2章第4節)では、中学校の段階で「情報セキュリティに関する基礎的・基本的な知識」を身に付け、「情報セキュリティの確保のために、対策・対応がとれる」ことが求められている。
時間配分
50 分(出欠・配布の 2 分を含む)
生徒が口を開くのは、2(30秒)、7(近くの人と30秒、必ずやる)、9(話し合い)、14(書く)。
| 時間 | スライド | 活動 | 問い |
|---|---|---|---|
| 0〜2分 | ― | 出欠・ワークシート配布 | ― |
| 2〜6分 | 1〜2 | 導入:同じ夜に一斉に「メンテナンス中」 | 「何が起きていたと思う?」(近くの人と30秒) |
| 6〜10分 | 3〜4 | 時系列(23時の公開は1日前倒し:その日の未明〈日本時間〉に番号などが漏れた)/止まったもの(短く) | ― |
| 10〜16分 | 5〜6 | PHP はサーバー側(言語が分かるサイトの 69.2%)。直すのはサーバー側/脆弱性(2件とも 9.2) | ― |
| 16〜20分 | 7 | 修正の公開は弱点の公開 | 近くの人と30秒(必ず)「それなら、修正を公開しなければいい?」 |
| 20〜22分 | 8 | 答え合わせ:公開しないと守る側が直せない。今回は公開前に漏れ、試みも見つかっていた。会社は予防のために止めた | ― |
| 22〜24分 | 9 | 首相の呼びかけ(短く) | ― |
| 24〜33分 | 10 | 話し合い:画面の手がかりカード A〜F(個人2分→班4分→発表3分、3班まで) | 「今夜、止める?止めない? どのカードをいちばん重く見た?」 |
| 33〜35分 | 11 | まとめ:止めると困ること/止めないと起こりうること。判断には、ふだんからの情報が要る(結論は言わない) | ― |
| 35〜37分 | 12 | 連携で夜を越えた(今回は流れが崩れかけた) | ― |
| 37〜38分 | 13 | 自分の端末でも毎週のように。学校の端末は学校が当てる | ― |
| 38〜42分 | 14 | 4つの行動(2 のパスワードは今回とは別の、ふだんの心がけ) | ― |
| 42〜50分 | 15 | ワークシート①③(②は10で書いた) | ― |
計 50 分(2+1+3+3+1+3+3+4+2+2+9+2+2+1+4+8)。
45 分版
スライド4(−1分)と9(−2分)を飛ばし、話し合いを 9 分→7 分(発表を2班)にする。計 45 分。首相の呼びかけはスライド3の時系列で触れる。
15 分の短縮版
| 分 | スライド |
|---|---|
| 2 | 2 |
| 2 | 3 |
| 2 | 5(直すのはサーバー側。ここを飛ばすと「スマホで PHP を更新しなきゃ」という誤解が残る) |
| 2 | 7(30秒の問いは一人に聞くだけ) |
| 2 | 8 |
| 3 | 14 |
| 2 | 15(③だけ口頭で) |
計 15 分。話し合いは省く。
話し合いの進め方(スライド10・11)
- 手がかりカードは刷らない。スライド10を画面に映すだけで使う。答え(止めると困ること・止めないと起こりうること)は見せない。
- 手がかりカード:A PHP が動くのは注文と会員のページ/B 修正版は23時、当てるのに約1時間/C 夜9〜11時はいちばん注文が多い/D 会員10万人の名前・住所・注文の記録/E 国家サイバー統括室と首相が「今夜」と呼びかけ(実際の出来事)/F 23時に当てたあと、動作の確認に約30分。A〜D・F は話し合いのための設定。
- 個人2分でカードを読んでワークシート②に書く。
- 発表は3班まで。ほかの班は、ワークシート②を回収して次の時間に紹介する。
- 板書例:左に「止めると困ること」、右に「止めないと起こりうること」、下に「判断に必要な情報(どこで PHP が動く? 外から届く? 誰が決める?)」。
- まとめ(スライド11):正解は一つではない。どちらを選ぶかは会社の事情による。結論は言わない。事実として、国家サイバー統括室は、すぐ当てるのが難しい場合は一時停止も「リスクを低減させるための有効策の一つと考えられます」と案内し、実際に止めた会社も多く報道された。判断に要る情報を、ふだんから持っておくことも守りの一部。
授業の前日に確かめること
- IPA のページで「国内被害の事例を把握していない」(10月27日時点)が変わっていないか。
- スライド4のサービス名は口頭で補う前提。1〜2個でよい。
- スライド9で首相の名前と投稿を映すので、管理職に一言伝えておく。政治的な評価はしない。
- 学校の端末の更新の管理(教育情報セキュリティポリシーに関するガイドラインでは、OS・ブラウザを含むソフトウェアの更新を一元管理することが望ましいとされる)。
よく出る質問と答え
- 「公開しなければいいのでは?」→ スライド7で近くの人と30秒で考え、スライド8で答え合わせ。公開しないと、世界中でサーバーを動かしている守る側が直せない。だから「公開して、すぐ当てる」。
- 「じゃあ、公開前から攻撃されてたの?」→ AWS のおとりのサーバーで「試み」が見つかった、ということ。どの会社が攻撃されたかは分かっていない。だから多くの会社は予防のために止めて、23時の修正を待った(スライド8)。
- 「伏せておくのは隠ぺい?」→ 隠すためではなく、準備ができた所からみんなが同時に直せるようにするため。今回はその前に漏れた。
- 「動画を誤って公開したのは誰?」→ 脆弱性を報告した側の会社(The PHP Foundation の説明)。スライド12で「報告する」側として出てくる。報告がなければ直せなかったが、同じ側のミスで手順が崩れかけた。人の仕事にはミスがある。だから、漏れても動けるように、ふだんの準備と連携が要る。
- 「パスワードで防げたの?」→ 防げない。今回の弱点は「ログインなしで」攻撃できるもの。パスワードの心がけは別の攻撃への備え(スライド14)。
ワークシート(worksheet-junior-high.pdf)
- ① 10月21日に何が起きたか(「脆弱性」「修正」「一時停止」を使って 2〜3 文で)
- ② 話し合い:止める・止めない・条件つき/いちばん重く見た手がかりカード(画面の A〜F)と理由(スライド10で書く)
- ③ 自分にできること(いつ・何をする?)
評価の目安:① で「修正の公開が弱点の公開でもある」ことと「予防のために止めた」ことの因果が書けている。② でカードを根拠に理由が書けている。③ が「いつ」を含む具体的な行動になっている。
使った事実と出典(スライドの隅にも記載)
| 事実 | 出典 |
|---|---|
| 修正版 23 時(14:00 UTC)公開、本来は 10月22日。CVE 番号などの漏えい(10月20日 15:00 UTC ごろ=日本時間21日 0時ごろ)で1日前倒し、報告した側の会社が攻撃の動画を誤って公開。報告は 8月 | The PHP Foundation(2026-10-21)https://thephp.foundation/blog/2026/10/21/todays-php-security-release-and-how-were-strengthening-php-security/ |
| 認証なしでのリモートコード実行を許しうる2件、2件とも CVSS v4.0 で 9.2 | PHP 公式 https://www.php.net/archive/2026.php |
| 国家サイバー統括室が21日午後に X で注意喚起。一時停止も「リスクを低減させるための有効策の一つと考えられます」 | 共同通信(熊本日日新聞掲載、2026-10-22)https://kumanichi.com/articles/2049509 / INTERNET Watch(2026-10-22) |
| 首相の X 投稿 21時55分ごろ、内容 | https://x.com/takaichi_sanae/status/2112890642590564386 / INTERNET Watch https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2150203.html |
| 止まったサービスの例 | 日本経済新聞・Impress Watch・ITmedia NEWS(2026-10-21)、ギズモード・ジャパン(2026-10-22)https://www.gizmodo.jp/article/php-vulnerability-incident-explained/ |
| サーバー側の言語が分かるサイトの 69.2% が PHP | W3Techs https://w3techs.com/technologies/details/pl-php |
| 公開の4日前に攻撃の試み、公開から数時間で攻撃コード | Amazon Threat Intelligence(2026-10-21) |
| 国内被害の事例は把握していない/CISA KEV 掲載(10月26日) | IPA https://www.ipa.go.jp/security/security-alert/2026/alert20261022.html |
高等学校(情報Ⅰ)指導の流れ:修正版の公開まで、あと1時間
スライド:php-20261021-high.pptx(本編 13 枚+付録 2 枚、ノートに台本)/php-20261021-high.pdf ワークシート:worksheet-high.pdf(A4、1 枚。直すときは .pptx) 出典:Data is CITY(teleport.jp/dataiscity/)、CC BY 4.0
ねらい(評価の観点ごと)
- 知識・技能:脆弱性・修正の公開・攻撃の関係を、時系列と根拠(一次情報)をもって説明できる。
- 思考・判断・表現:サービスを止めるかどうかの判断を、情報セキュリティの観点と、判断に必要な情報(識別・統治)から考察できる。
- 主体的に学習に取り組む態度:運営者と利用者それぞれの役割を踏まえ、情報社会の一員としての自分の行動を決めようとしている。
学習指導要領のどこに当たるか
| 科目・項目 | 本文 | この授業での扱い |
|---|---|---|
| 情報Ⅰ 2 内容 (1) ア(イ) | 「情報に関する法規や制度、情報セキュリティの重要性、情報社会における個人の責任及び情報モラルについて理解すること。」 | 責任の分かれ目(スライド11)、自分にできること(12) |
| 同 (1) イ(イ) | 「情報に関する法規や制度及びマナーの意義、情報社会において個人の果たす役割や責任、情報モラルなどについて、それらの背景を科学的に捉え、考察すること。」 | 「なぜ首相まで今夜と言ったか」を、漏れ(前倒し)・公開後の差分からの攻撃・連携の根拠で説明し直す(2→13) |
| 同 (4) ア(ア) | 「情報通信ネットワークの仕組みや構成要素、プロトコルの役割及び情報セキュリティを確保するための方法や技術について理解すること。」 | クライアントとサーバー(4)、RCE・CVE・CVSS(5)、協調された公開(6) |
| 同 (4) イ(ア) | 「目的や状況に応じて、情報通信ネットワークにおける必要な構成要素を選択するとともに、情報セキュリティを確保する方法について考えること。」 | NIST CSF の 6 つの機能(9)、止める判断(10) |
| 総則 | 第1章 第2款の2(1) 情報活用能力(情報モラルを含む) | 全体 |
(本文は高等学校学習指導要領〈平成30年告示〉第2章第10節 情報 第2款 第1 情報Ⅰ から写した。) 「公共」の情報化と社会、「総合的な探究の時間」の課題設定(例:自分の学校・部活のサイトはどこで動いているかを、管理する人に聞いて調べる)にも広げられる。
時間配分
50 分(出欠・配布の 2 分を含む)
生徒が口を開くのは、2(予想を書く)、5(近くの人と30秒、必ずやる)、7、9、10(話し合い)、13(書く)。
| 時間 | スライド | 活動 | 問い |
|---|---|---|---|
| 0〜2分 | ― | 出欠・ワークシート配布 | ― |
| 2〜6分 | 1〜2 | 首相の投稿。予想をワークシート①へ | 「なぜ、そこまで急いだのか?」 |
| 6〜8分 | 3 | 止まったもの(予防のために自ら止めた。BASE は15時50分から) | ― |
| 8〜11分 | 4 | PHP の位置(サーバー側の言語が分かるサイトの 69.2%)。直すのはサーバー側 | ― |
| 11〜16分 | 5 | 2 件の脆弱性(2件とも 9.2、RCE)。メモリが壊れる仕組みは口で一言 | 近くの人と30秒(必ず)「3つがそろうと、なぜ最悪?」 |
| 16〜20分 | 6 | 時系列①:8月の報告→10/17 攻撃の試み→漏えい・前倒し→PoC。AWS と PHP 側の見方の割れ | ― |
| 20〜23分 | 7 | 時系列②:23時公開→26日 CISA の KEV に載る(悪用が始まった日ではない)→IPA | 「被害の事例を把握していない=被害がない?」 |
| 23〜26分 | 8 | 一般論:差分は攻撃の手がかり(AI の研究は Firefox など。PHP ではない)。急いだ理由は両方:公開前の漏れ(→前倒し)と、公開後に差分から来る攻撃 | ― |
| 26〜30分 | 9 | NIST CSF 2.0:6 つは同時に回す、中心に統治 | 「ふだんから持っていないと困ったのは?」(一つでなくてよい) |
| 30〜39分 | 10 | 話し合い(机の移動と個人1分→班5分→発表3分、3班まで) | 「21時、止める?止めない? 判断に必要な情報は?」 |
| 39〜42分 | 11 | 運営者と利用者の役割 | ― |
| 42〜46分 | 12 | 4つの行動(「今回も」と「ふだん」を分ける) | ― |
| 46〜49分 | 13 | ワークシート③。④(200字)は宿題でよい。①の予想を一言で言い直す | ― |
| 49〜50分 | ― | 予備 | ― |
計 50 分(2+1+3+2+3+5+4+3+3+4+9+3+4+3+1)。机の移動で押したら、スライド7を省く。
45 分版
スライド3(−2分)と7(−3分)を飛ばす。計 45 分(予備 1 分を残す)。KEV と IPA の話はスライド6の台本で一言触れる。
15 分の短縮版
| 分 | スライド |
|---|---|
| 2 | 2 |
| 3 | 5(30秒の問いを含む) |
| 3 | 6 |
| 2 | 8 |
| 2 | 9 |
| 2 | 12 |
| 1 | 13(①を言い直すだけ) |
計 15 分。
付録(本編に入れない)
- 付録 A(14):侵入された後、組織の中に広がる速さ(平均29分・最速27秒、2025年の eCrime)。修正を当てる速さとは別の量。「なぜ時間で測るの?」と聞かれたとき用。
- 付録 B(15):NICTER のダークネット観測、2016年→2025年(9年)で約4.9倍。2025年の約55%は調査目的のスキャンで、すべてが攻撃ではない。
指導の注意
- 首相の投稿は事実として扱い、政治的な評価はしない。首相の名前と投稿を映すので、管理職に一言伝えておく。
- 時刻は日本時間で示す(出典の UTC:修正版公開 14:00 UTC=23:00 JST、漏えい 10月20日 15:00 UTC ごろ=21日 0時ごろ、最初の PoC 21日 02:00 UTC ごろ=11時ごろ)。
- PoC の時期は出典で見方が割れる(スライド6にも表示)。AWS は「公開の約12時間前から複数の PoC」、The PHP Foundation は「公開時点で、機能する攻撃コードは把握していなかった」。誰が、どこから観測したかで読み分ける。
- 26日は CISA の KEV カタログに載った日。悪用が始まった日ではない(攻撃の試みは公開前の17日から見られていた)。
- 前倒しの理由は番号などの漏れ(The PHP Foundation)。AWS が17日に見た攻撃の試みは、前倒しの理由には挙げられていない。
- 急いだ理由は両方:公開前の漏れ(→前倒し)と、公開した後に差分から攻撃が来ること(首相・NCO の「23時の修正をすぐ当てる準備を」)。どちらが先・大きいとは出典に書いていない。
- スライド3:各社が言っているのは「予防的な措置」まで。攻撃される前だったかどうかは分からない。止めた時刻は会社ごとに違う(BASE は予告より早めて15時50分から。夜8時ごろから多くが続いた)。
- NCO の案内の言葉は原文どおり「…一時的に停止させることも、リスクを低減させるための有効策の一つと考えられます」。
- スライド8の「AI で1時間足らず」は、Firefox の JavaScript エンジンと Windows のカーネルを対象に、特定の試作のモデルで行った研究室の条件の研究。PHP の話ではない。
- NIST CSF 2.0 の 6 つの機能は成果の分類で、同時に回すもの。統治はほかの 5 つを貫く中心。順番の正解を決めない。
- 怖がらせて終わらない。数字の続く枚は付録に回し、最後は自分の行動で閉じる。
- 攻撃コードや漏れた情報を「探してみる」課題は出さない。自校のサイトを外から試すこともしない。
よく出る質問と答え
- 「mod_php とは?」→ Apache というウェブサーバーの中に PHP を組み込んで動かす方式。PHP 公式は、mod_php の環境では、アプリのコードが動く前の段階で、認証なしのリクエストから攻撃が届くことを示し、リスクが最も高いとした。ほかの環境についてはそこまで言っていない。
- 「なぜメモリ不足から乗っ取りになるの?」→ 処理の途中で止まると、メモリが中途半端な状態で残る。一般に、壊れたメモリを攻撃者が自分のデータで埋められると、プログラムの流れを乗っ取って好きなコードを動かせる。109619 は、前のリクエストで解放されたメモリを指す状態が残る「解放後使用」(The PHP Foundation)。
- 「うちの学校のサイトは大丈夫?」→ どこで動いているか(教育委員会のサーバー、委託先、レンタルサーバー)による。答えるのは管理する側。情報担当の先生や教育委員会に聞く。
- 「パスワードで防げたの?」→ 防げない。今回の弱点は認証なしで攻撃できるもの。パスワードの心がけは別の攻撃への備え(スライド12で「ふだん」と表示)。
授業の前日に確かめること
- IPA のページの更新(国内被害の書きぶり、KEV の記述)。事実はまだ動いている(例:約束の日時より前に修正入りのイメージを出した会社〈Chainguard〉があった、と The PHP Foundation は書いている)。
- ワークシートの印刷(A4、1 人 1 枚)。
ワークシート(worksheet-high.pdf)
- ① 授業のはじめの予想:なぜ首相まで「今夜」と言ったのか(一言) ← スライド2
- ② 話し合い:止める・止めない・条件つき、理由/判断に必要な情報 2 つ・利用者に何をいつ伝えるか ← スライド10
- ③ 自分がとる行動を一つ(いつ・何を・どう確かめる) ← スライド13
- ④ 10月21日に何が起きたか(200字、「脆弱性」「修正の公開」「一時停止」を使う。宿題でよい)
評価の目安:知識・技能は ④ で「番号の漏れ → 1日前倒し」と「修正の公開=弱点の公開(公開後すぐ攻撃が来る)→ 今夜すぐ当てる・止める」の二つの因果が、取り違えずに書けているか(17日の攻撃の試みを前倒しの理由にしていないか)。思考・判断・表現は ② で「識別(どこで動いているか)」「統治(誰が決めるか)」に当たる情報が挙がっているか。主体的に学習に取り組む態度は ③ が「いつ」「どう確かめる」まで具体的か。
使った事実と出典(スライドの隅にも記載)
| 事実 | 出典 |
|---|---|
| CVE-2026-109618/109619、2件とも CVSS v4.0 9.2、認証なしの RCE、mod_php のリスクが最も高い、修正版 8.5.12・8.4.27・8.3.36・8.2.35、「完全な回避策はなく更新だけが安全」 | PHP 公式 https://www.php.net/archive/2026.php |
| 2 件の仕組み(OOM で中途半端なデータ/解放後使用)、8月11日・24日の報告、本来 10月22日の予定、CVE 番号の漏えいで前倒し、動画の誤公開、23時(14:00 UTC)公開、公開時点で機能する攻撃コードは把握せず、Chainguard の早出し | The PHP Foundation(2026-10-21) |
| 10月17日に攻撃の試みを観測、最初の PoC は公開の約12時間前、公開後数時間で PoC、「7日・30日ではなく時間で測る」 | Amazon Threat Intelligence(2026-10-21)https://aws.amazon.com/blogs/security/amazon-threat-intelligence-identifies-php2shell-exploitation-prior-to-public-disclosure-in-madpot/ |
| NCO が21日午後に注意喚起(一時停止も「リスクを低減させるための有効策の一つと考えられます」)、首相投稿 21時55分ごろ | 共同通信(2026-10-22)https://kumanichi.com/articles/2049509 / INTERNET Watch https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/2150203.html |
| IPA の注意喚起(10月22日)、CISA KEV 掲載(10月26日)、国内被害の事例は把握せず(10月27日更新) | IPA https://www.ipa.go.jp/security/security-alert/2026/alert20261022.html |
| サーバー側の言語が分かるサイトの 69.2% が PHP | W3Techs https://w3techs.com/technologies/details/pl-php |
| AI で差分から1時間足らずで攻撃コード(Firefox・Windows、試作のモデル、研究室の条件) | Anthropic Frontier Red Team(2026-06-08)https://www.anthropic.com/research/n-days |
| 侵入から横への広がり 平均29分・最速27秒(2025年、eCrime)〔付録 A〕 | CrowdStrike 2026 Global Threat Report https://crowdstrike.com/en-us/press-releases/2026-crowdstrike-global-threat-report |
| ダークネット観測 2016年 約1,440億 → 2025年 約7,010億パケット(9年で約4.9倍)、2025年の約55.0%は調査目的のスキャン〔付録 B〕 | NICT「NICTER 観測レポート 2025」https://csl.nict.go.jp/report/NICTER_report_2025.pdf |
| 守りの 6 機能(統治・識別・防御・検知・対応・復旧) | NIST CSF 2.0 日本語訳(IPA)https://www.ipa.go.jp/security/reports/oversea/nist/ug65p90000019cp4-att/begoj9000000d400.pdf |
| 止まったサービスの例、BASE は予告より早めて15時50分から停止し、のちに予防的な措置と説明 | 日本経済新聞・Impress Watch・ITmedia NEWS(2026-10-21)、ギズモード・ジャパン(2026-10-22)、ロケットボーイズの記事(BASE の案内による)https://rocket-boys.co.jp/security-measures-lab/base_emergency_database_maintenance_2026102/ |


