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銀行がサイバー攻撃を受けたら、預金はどこまで守られるのか。戻るお金と、戻りにくいお金がある
「国が
銀行が攻撃されても預金は消えない。でも、すべてが戻るわけではない。お金は一つの銀行にまとめず、一つの口座から出ていく量を小さくし、おかしいと思ったらすぐ銀行へ。

銀行がサイバー攻撃を受けたら、預けたお金はどうなるのか。
2026年10月21日、プログラミング言語PHPの重大な弱点を直す修正版が公開された夜、銀行やネットショップが次々にサービスを一時止めた。スマホの銀行のアプリが開かず、不安になった人も多かったはずだ。
「銀行のお金は、国が1,000万円まで保証してくれる」と聞いたことがある人は多い。けれど、それは半分だけ正しい。何が起きたかによって、お金を守る仕組みはまったく違うからだ。
この記事では、金融庁・預金保険機構・全国銀行協会などの公表資料をもとに、預金を守る仕組みを、起きたことごとに読み解く。先に結論を書くと、覚えておくことは3つだけだ。
- お金は、一つの銀行にまとめない
- 一つの口座から出ていく量を、小さくしておく
- おかしいと思ったら、すぐ銀行へ
なぜこの3つなのか。漫画と一緒に見ていこう。
漫画 ハルエさんと、銀行のお金
第 1 話アプリが開かない朝
4 ページ・右から左へめくります
画像は AI で生成しています
セリフを文字で読む
- 1 ページ目 描き文字:え ハルエ:わたしの……貯金……
- 2 ページ目 ソウタ:ばあちゃん、ニュース見た? ハルエ:ソウタ! お金が消えちゃった! ソウタ:消えてない消えてない ソウタ:預金って、銀行に『返して』と言える約束なんだ ソウタ:画面の数字が消えても、約束は消えない ハルエ:なあんだ……
- 3 ページ目 ソウタ:ただね ソウタ:正しい残高を確かめて、元に戻すのに、時間がかかるかもしれない ハルエ:その間、お金、おろせないの……? ソウタ:それに、狙われるのが一つの銀行なら ソウタ:ほかの銀行のお金は、ふだんどおり使えるんだ
- 4 ページ目 ハルエ:一つにまとめておけば、安心だと思ってたのよ ソウタ:まとめるのは悪くないよ ソウタ:でも、一つだけだと、そこが止まったら全部止まる ハルエ:生活のお金の口座を、もう一つ
01銀行が攻撃されても、預金そのものは残る
まず、銀行そのものがサイバー攻撃を受けた場合だ。
たとえば、犯罪者が銀行の中のネットワークに入り込み、銀行のお金を100億円盗んだとする。このとき、銀行が失った100億円と、私たちが預けている預金は、法律の上では別の問題になる。
預金とは、銀行に「返してください」と言える権利だ。銀行は預かった現金を金庫にしまっているのではなく、貸し出しなどに使っている。だから、銀行が自分のお金を攻撃で失っても、それだけで私たちに返す義務がなくなるわけではない。
では、口座の残高のデータそのものが書き換えられ、本来5,000万円ある残高が0円になったらどうか。この場合も、画面の数字が0円になったことと、返してもらう権利が消えたことは同じではない。
ただし、現実には問題が起きる。銀行は正しい残高を元に戻せるのか。不正な送金がされていなかったか。それを確かめて元に戻すまでには、時間がかかるかもしれない。こうした事態を、国が一律に、すぐに補償する制度は、今の日本の預金を守る仕組みには見当たらない。
預金は消えない。けれど、すぐに使えるとは限らない。一つの銀行にすべてを預けていると、その間、生活のお金がおろせなくなる。
02預金保険が守るのは、銀行がつぶれたときだ
「1,000万円まで保証」と呼ばれているのは、預金保険という制度だ。法律で決められた仕組みで、銀行などが加入し、預金保険機構が運営している。
この制度が守るのは、銀行がつぶれた(破綻した)ときの預金だ。サイバー攻撃の被害を補償する保険ではない。
| 預金の種類 | 銀行がつぶれたときに守られる額 |
|---|---|
| 利息の付く普通預金・定期預金など | 元本1,000万円と、つぶれた日までの利息まで |
| 当座預金・利息の付かない決済用の普通預金など | 全額 |
| 外貨預金 | 守られない |
大事なのは、1,000万円が一人、一つの銀行ごとの合計だということだ。同じ銀行に口座をいくつ持っていても、合わせて1,000万円までになる。
たとえば、ある銀行に3,000万円の普通預金があり、その銀行がサイバー攻撃の大きな損失をきっかけにつぶれたとする。預金保険で守られるのは元本1,000万円とその利息までだ。残りの2,000万円がどこまで戻るかは、つぶれた銀行に残った財産しだいになる。一方、利息の付かない「決済用預金」なら、3,000万円の全額が守られる。
つまり、1,000万円を超えるお金があるなら、銀行を分けるか、決済用預金を使うことで、守られる範囲に収めることができる。
漫画 ハルエさんと、銀行のお金
第 2 話「口座を止めました」というメッセージ
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- 1 ページ目 描き文字:ピロン ハルエ:また!? ハルエ:ええと、番号と、合言葉と、いま届いた数字……
- 2 ページ目 描き文字:ピロン 描き文字:ガーン ソウタ:すぐ銀行に電話して。それから警察にも ソウタ:早いほど、止められるかもしれない
- 3 ページ目 窓口の人:お取引を止めます。状況をくわしくお聞かせください ハルエ:お金は……戻るんでしょうか 窓口の人:インターネットでの不正な送金は、銀行の決まりで、お客さまに落ち度がなければ、原則として補償しています 窓口の人:ただ、全額かどうかは、くわしく確かめてから決めることになります ハルエ:……番号、入れちゃったのよね、わたし
- 4 ページ目 ソウタ:振込の上限を、低くしておこう ソウタ:お金が動いたら、すぐ知らせが来るようにもね ソウタ:……実は僕も、上限、初めのままだった ハルエ:あら ソウタ:お金が戻るかどうかは、まだ分からない。でも、早く知らせたのはよかったよ
03口座を乗っ取られたら、銀行の補償がある。ただし全額とは限らない
実際に多く起きているのは、銀行そのものではなく、一人ひとりの口座が乗っ取られる被害だ。本物そっくりのメッセージやホームページで暗証番号などを盗まれ、知らないうちに犯罪者の口座へお金を送られてしまう。
このとき、預金保険は関係ない。問題になるのは、銀行の補償だ。
盗まれたり偽造されたりしたキャッシュカードで、ATMからお金を引き出された場合は、「預金者保護法」という法律が預金者を守っている。ところが、インターネットバンキングでの不正な送金には、この法律は直接当てはまらない。
そこで全国銀行協会は2008年、個人の客のインターネットバンキングの被害について、客に落ち度(過失)がなければ、銀行に落ち度がなくても原則として補償するという申し合わせをした。これは法律ではなく、銀行どうしの自主的な決まりだ。客に落ち度があるときは、一つひとつ判断される。
実際にはどれくらい補償されているのか。金融庁が2026年6月30日に公表した集計では、2005年2月から2026年3月までに起きたインターネットバンキングの不正な払い戻しで、補償するかどうかが決まった35,259件のうち、補償されたのは26,409件、74.9%だった。調べた結果、不正ではなかったと分かったもの(家族による払い戻しなど)を除くと82.2%になる。
ただし、これは件数の割合だ。戻ったお金の割合ではなく、一部だけ補償されたものも「補償された」に入っている。4件に1件は、補償されていない。
会社の口座は、さらに注意がいる。全国銀行協会は2014年、会社向けのインターネットバンキングの被害については、補償するかどうかや上限を、それぞれの銀行が判断するという考え方を示した。個人と同じように補償されるとは限らない。
被害に気付いたら、すぐに銀行に知らせることが大切だ。早ければ送金を止められることがあり、銀行によっては補償を受けられる期間に決まりがある。警察にも届け、取引の記録を残しておく。
そして、もう一つの守りが、一つの口座から出ていく量を小さくしておくことだ。インターネットの振込の上限を低くし、お金が動いたらすぐ知らせが来るようにしておけば、乗っ取られても被害を小さくできる。
漫画 ハルエさんと、銀行のお金
第 3 話孫の声の電話
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- 1 ページ目 描き文字:リリリリ 声:ばあちゃん、俺……事故、起こしちゃって ハルエ:ソウタ!? だいじょうぶなの!? 声:今日中に 300 万、振り込んでほしいんだ。誰にも言わないで
- 2 ページ目 ハルエのモノローグ:……おかしいと思ったら ハルエ:ソウタ?
- 3 ページ目 ソウタ:え? 俺、会社だけど 描き文字:はあ〜〜 ソウタ:自分で振り込んだお金は、相手の口座に残っている分からしか戻らないんだ ソウタ:全部戻るとは、限らない
- 4 ページ目 ハルエ:お金は分けた。上限も下げた ソウタ:あと一つ。急がせる電話は、一度切って、かけ直す ハルエ:長い説明より、そのほうが覚えやすいわね ソウタ:……短くするよ
04自分で振り込んだお金が戻るのは、相手の口座に残っている分まで
乗っ取りとは別に、だまされて自分で振り込んでしまうこともある。家族を名乗る電話で「今日中にお金が必要だ」と急がされる、といった詐欺だ。
この場合は、他人に勝手に送金された被害とは扱いが違う。「振り込め詐欺救済法」という法律で、振り込んだ先の口座を凍結し、そこに残っているお金から被害者に分配する仕組みがある。けれど、戻るのは口座に残っている分までで、被害者が何人もいれば分け合うことになる。全額が戻る保証はない。
だから、振り込む前に止まることがいちばんの守りになる。警察庁も、電話でお金の話が出たら一度電話を切り、家族の元の電話番号にかけ直したり、警察に相談したりするよう呼びかけている。
05株・投資信託・FXは、預金とは別の仕組みで守られている
銀行で買った金融商品でも、それが預金なのか、投資信託なのかで、守られ方は違う。
| 金融商品 | 金融機関がつぶれたとき |
|---|---|
| 円の普通預金・定期預金 | 預金保険で元本1,000万円と利息まで |
| 利息の付かない決済用預金 | 預金保険で全額 |
| 外貨預金 | 預金保険の対象外 |
| 銀行で買った投資信託 | 預金保険の対象外。銀行の財産とは分けて管理されている |
| 証券会社にある株・投資信託 | 会社の財産と分けて管理され、原則として返ってくる。返せないときは、日本投資者保護基金が一人1,000万円まで補償 |
| FXの証拠金 | 業者の財産と分けて信託で管理する仕組み。投資者保護基金の対象外 |
証券口座の乗っ取りは、2025年に大きな問題になった。不正なアクセスで勝手に株を売り買いされる被害が相次ぎ、日本証券業協会と大手・ネットの証券会社10社は2025年5月2日、約款の決まりにかかわらず一定の補償をする方針を公表した。ただし補償の額は、IDやパスワードの管理などの状況を見て、一つひとつ決める。
被害が実際に広がると、法律で決まった仕組みでは救えず、業界が新しく補償の方針を決めることがある。これも、今の制度の一つの姿だ。
06金融庁と日本銀行は、AIで攻撃が速くなることを課題にしている
AIが攻撃を速く、大量に、安くしていくことは、金融の当局も正式な課題として受け止めている。
2026年5月22日、金融庁と日本銀行は連名で、「フロンティアAI」による脅威の変化を踏まえた対応を金融機関に求めた。10月9日にも金融庁は、サイバーセキュリティ対策の強化を金融機関に呼びかけている。
ただし、守りを固めることと、攻撃が成功してしまった後に誰が損を負うかは、別の問題だ。たくさんの銀行で同時に被害が起きたら、それぞれの銀行はどこまで補償できるのか。被害を確かめ、お金を取り戻すのに、どれだけ時間がかかるのか。AIによる全国規模の不正送金や記録の破壊に対して、被害者のすべての損失を国が保証する一般的な制度は、今回の調査では確認できなかった。ここは、これからの制度の課題だ。
07覚えておくことは3つ。まず、お金を一つの銀行にまとめない
ここまでを、普通の人にできることにまとめると、3つになる。
1. お金は、一つの銀行にまとめない。 サイバー攻撃の時代にまとめない理由は二つある。一つの銀行のシステムが止まっても、ほかの銀行のお金で暮らせること。一つの口座が乗っ取られても、被害がその口座で止まること。使わない口座を放っておかず、自分で目の届く数に分ける。なお、1,000万円を超える預金があるなら、銀行がつぶれたときに備えて、銀行を分けるか決済用預金にすることも考えたい。
2. 一つの口座から出ていく量を、小さくしておく。 銀行を分けても、乗っ取りやだましは防げない。インターネットバンキングを使っているなら、振込の上限を低くし、お金が動いたら知らせが来るようにしておく。キャッシュカードと暗証番号は人に預けない。
3. おかしいと思ったら、すぐ銀行へ。 覚えのない引き出しや振込があったとき、キャッシュカードをなくしたときは、すぐ銀行に電話し、警察にも知らせる。「急いで振り込んで」という電話は、一度切って、家族にかけ直す。
どれも、とても基本的なことだ。けれど、銀行の仕組みがどれだけ固くても、最後にお金の出入りを決めるのは私たち自身でもある。
この記事の要点を大きな字で1枚にまとめた「渡す1枚」を用意した。印刷して、離れて暮らす親や家族に渡してほしい。裏には、銀行と家族の電話番号を書き込める。
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この記事について
本記事は、Data is CITY Media編集部が金融庁・預金保険機構・全国銀行協会・日本証券業協会などの公表資料をもとにまとめた調査レポートを、読みやすく書き直したものです。数字と制度は、それぞれの一次情報で確かめました。
補償率(74.9%・82.2%)は件数の割合で、個人と法人を合わせた累計です。2026年4月末までの報告をもとにしており、過去の分も今後変わることがあります。漫画の人物・銀行(「ひばり銀行」)・出来事は架空のものです。漫画と画像はAIで生成しています。
この記事は、お金の守り方の一般的な仕組みを説明するもので、個別の金融商品や銀行を勧めるものではありません。実際の補償の扱いは、それぞれの銀行の規定と、被害の状況によって決まります。
参考資料
- 預金保険機構:預金保険制度の解説(保護の範囲)
- 金融庁:預貯金の不正送金被害等の発生状況(令和8年3月末)について(2026年6月30日)
- 全国銀行協会:預金等の不正な払戻しへの対応について(2008年2月19日)
- 全国銀行協会:法人向けインターネット・バンキングにおける預金等の不正な払戻しに関する補償の考え方について(2014年7月17日)
- e-Gov法令検索:偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律
- 金融庁:振り込め詐欺救済法
- 日本証券業協会:「今般のインターネット取引サービスにおけるフィッシング詐欺等による証券口座への不正アクセス等による対応について(10社申し合わせ)」の公表について(2025年5月2日)
- 日本投資者保護基金:よくある質問
- 警察庁:オレオレ詐欺(手口と対策)
- 政府広報オンライン:警察に対する相談は警察相談専用電話「#9110」番へ
- 金融庁:「フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応」に係る要請について(2026年5月22日)
- 金融庁:現下の情勢を踏まえたサイバーセキュリティ対策の強化と各種取引申込等における対応について(2026年10月9日)
- 日本銀行金融研究所:山本慶子「デジタルマネーの不正取得に伴う損失分担についての法的検討」『金融研究』第44巻第2号(2025年4月)



